今回は少し予定を変更して、皆様にぜひ読んで頂きたい、一冊の本をご紹介したいと思います。
実は、著者の関本剛先生は私の高校の同級生です。
写真をごらんになってお分かりでしょうか。そう、彼はがん患者を看取る緩和ケア医でありながら自身も肺がんを患っています。しかも脳に転移しているステージ4です。
恥ずかしながら私は、昨年の8月に別の同級生からLINEでこの本を紹介され、初めて彼の病状を知ることになりました。彼とは高校卒業後、一度同窓会で会ったきりでしたので、まさかそんなことになっているとは露知らず、携帯を見て電車の中で思わず「まじか・・・」と声に出してしまったほどでした。
彼は卒業大学こそ違いますが、私と同じ消化器内科医でしたので、学会誌などで名前を見るたびにその活躍ぶりが気になっていました。その後、お母様のクリニックを継いで緩和ケアの道に進んだとは聞いていたのですが、その彼がまさか余命2年とは・・・
私はすぐにAmazonでこの本を購入し、一気に読み切りました。
内容については百聞は一読にしかず、私がとやかく語るつもりはありません。ですが、大切なご家族を前に揺れ動く感情を抱えながら、自らが病魔に冒されてなお、患者さんのためにこのような力強く暖かいメッセージを発信できる彼を、同じく幼い子供を持つ親として、同じ医師として、そして何より人として心から尊敬します。
「悲しみに暮れる時期が過ぎた今、私は自分自身が看取られるその日まで、医師としての使命をまっとうし、最後まで患者さんの横に立ち続けていきたい」
もし彼と同じ状況になったときに、いったいどれだけの医師がこの想いを持てるでしょうか。
先日、NHKのハートネットTVで彼の特集が放送されました。その中で知った現在の彼の病状は、私の淡い期待を裏切るつらいものでした。しかし、今も目の前の終末期の患者さんに全力で向き合っている彼の姿を見て私は、奇跡が起こって欲しいと思っていた自分が恥ずかしくなりました。画面の中の彼はもはや奇跡など望んでおらず、「この先、自分はどう生きるべきなのか」という彼の中の問いかけに、彼の今持てる最大限の力で答えていたからです。その姿は眩しくすらありました。
「人は生きてきたように死んでいく」
本書で紹介されているこの言葉の意味は、人の生き様はその人が亡くなる直前の姿に反映され、「よき死」は「よき生」から生まれるという意味だそうです。
私には何もしてあげることはできませんが、彼の残りの人生に心からエールを送りたいと思います。そして彼の生き様に恥じぬよう、私も自分が信じる道を精一杯生きていきます。それが生かされた者の使命だと思いますし、彼が「がんを生きる」患者さんだけではなく、我々にも伝えてくれているメッセージだと思うからです。人が「生きてきたように死んでいく」のであれば、いつか私が死を迎えるときに、彼に胸を張って、「悔いのないように生きてきたぞ」と言えるように今を生きていく、そう決意しています。
皆様、ぜひご一読ください。
そして「生きる」ことの意味について今一度、考えてみて頂ければ幸いです。