クリニックにかける思い

2021年11月08日

今回は前回予告しました通り、私がこのクリニックにかける思いを少しお書きしたいと思います。

少しばかり内輪の話になりますがご容赦ください。

世の中の開業医の先生方の多くがそうであるように、実は私の父も開業医です。いえ正確に言うと開業医でした。大阪市内にある父方の実家で、やはり父の父(つまり私の祖父)から継承して一般内科とペインクリニックをやっておりました。祖父は比較的若くして亡くなったので、父が岡田診療所を継いだのは今の私よりももう少し若い頃でした。住居に併設した診療所でしたので、私も幼い頃は遊びに行ったついでに診察が終わった診療所内へ入らせてもらい、父の診察鞄をのぞいたり、薬品の匂いを嗅いだりしていた記憶があります。それから地域に根ざして40年近く、父は多くの患者さんを診てきたのですが、10年ほど前に大病を患って、その際の手術の合併症で下半身に麻痺が残ってしまい、診療を続けることができなくなってしまいました。当時の諸々のしがらみの中で私がすぐに継ぐことができずに、残念ながら事実上の閉院となってしまい今に至ります。父が直接言うことはありませんでしたが、祖父から継いで建て直しまでした思い入れのある診療所でしたから、きっと無念であったろうと思います。

父が診療所で働く姿を身近に見てきた私にとって、父の跡を継いで開業医になることは医師になった当初からの目標であり、夢でした。その中で、たとえ事情があるにせよ、岡田診療所を継ぐことが出来なかったことは、ずっと私の心の中にとげのような悔恨として残っていて、開業に対する思いを加速させてくれる原動力になったことは間違いありません。場所と名前は変わってしまいましたが、今回こうした形で開業することができ、父の志を引き継ぐことができたのではないかと勝手に思っています。地域の患者さんたちに愛された父のように、私もその背中を追いかけ、皆様と一緒に暖かいクリニックを作り上げていきたいと思います。

父の診察室にあった時計は今、院長室に飾ってあります。


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